『光』:映画を通じて出会う2人の光り輝く物語。河瀬監督流の映画術が至るところに秘められるが、物語として分かりやすいのがどうかと。。

光

「光」を観ました。

評価:★★★

視覚障害者のためのナレーション製作を手がけながらも、どこか単調な日々を送っていた美佐子。彼女は仕事を通じて、弱視の天才カメラマン・雅哉と出逢う。美佐子の拙いナレーション技術に苦言を呈す彼の存在に戸惑いながらも、彼の撮影した夕日の写真に心を突き動かされる。次第に視力を奪われていく雅哉の葛藤を見つめるうち、美佐子の中で何かが変わり始める。。「殯の森」の河瀬直美監督によるラブストーリー。出演は、「あん」の永瀬正敏、「HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス」の水崎綾女。

日本にも様々なインディーズ映画を撮っている監督がいますが、その中でもカンヌなどの世界を相手にできる映画監督の1人ともいえる河瀨直美監督。彼女の作品はボチボチと観ている方ですが、「殯の森」などもとても芸術志向が強くて、シーンごとの風景は美しいものの、落ち着かないカメラワークや即興劇のようなシナリオ構成にどうしても入っていけない自分がいたのも事実です。そんな彼女の作品の中で、話題にもなった前作の「あん」はとてもスッキリとした分かりやすい作品になっていて、しかも彼女の持ち味の光の使い方や、美しい風景の中に逆にあぶり出される人間の醜い一面みたいのが含まれていて、初心者にもオススメしたい作品になっていたと思います。

その「あん」の次作となった本作は、物語としては更に分かりやすい構成になっているかと思います。タイトル通りの、「光」というのが映画のテーマにも重要になっていて、視覚障害者と向き合う主人公・美佐子に対し、美佐子がのめり込んでいく対象が”光”を失っていく元カメラマン・雅哉。後天性の障害というのは辛いもので、大好きなカメラをも扱うことを許されなくなっていく身体に苛立つ雅哉にとって、偽善者にも映っていた美佐子の存在が、彼女が急接近してくることによって違う存在に変わっていく。やや分かりやすいラブストーリーになっているのはいかんせんという感じもしますが、視覚障害の方をキャスティングしたり、美佐子がナレーションする映画も意味をもたせ、本格的に作り上げるところなど、映画芸術としての見せ場は随所に見ることができます。

次回レビュー予定は、「ケアニン あなたでよかった」です。

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